なんのためにアンケートをするか
- 自社製品・サービスの強みを理解する
- どういう理由で選ばれたのか、どういう人に選ばれているのかを知る
- リアルな声を活かした広告や商品ページ・セールストークの土台にする
- 商品・サービスで伸ばすべき強みを理解する
よくあるワードを使うと、「顧客理解」とか「ペルソナを作る」とかそういうところを実現しつつ、そこからカスタマージャーニーやCVまでの動線などを考えようという感じかなと思います。
お客様目線かどうかの判断
以下の質問に回答できて、それが現状と合っている状態が理想。そうでないならば、顧客の声を聞くためにアンケートなどの施作を検討した方が良い。
- どんな悩みや欲求を持って、あなたの商品やサービスを買おうとしているか?
- 成約率の高い媒体は何?
- 購入前に不安に感じていることは何か?
- 類似品とくらべてどこが良いと判断してもらったのか?
- その商品を買うことでどんないいことがあるか?
本書で紹介されるアンケートの設問と実はほぼ同じ内容で、顧客がどういう回答を書くだろうかということが想像できるか、想像できるくらい顧客と製品のことを理解できているかといったことを試されているかなと思います。
アンケートの作り方
本書で紹介されているアンケート作りのポイントは5点あります。書籍内では6点ですが、個人的には5つと理解しています。
1:タイトルで記入してくれる人を増やす
NOT「アンケート」BETTER「お声をお聞かせください」
「アンケートに答えてください」というリクエストをあちこちでうけるのが日常生活なので、なるべくそのワードを避けて心理的な負荷が下がる依頼タイトルにするのが理想とのことでした。
定量的な調査というよりは、定性的(感情的・主観的)な情報を集める目的のアンケートですので、フォーマルではなくカジュアルな形でのリクエストが良さそうです。
2:お願い文で、「自社の強みを聞く」
強みをまず伸ばして、弱点を補うのはそれから。
アンケートだとどうしても「改善点を〜」となりがちですが、ここで紹介されているアンケートは「強み」を聞くもの。そのため、「より良いサービスを提供するためにも、嬉しく感じたことや助かったことを教えてください」のようにポジティブ方向の意見を求める形で依頼文を作ります。
この辺りで近いかもなと感じたことは、プロ野球のソフトバンクホークスが採っている育成ドラフト方針かなと思います。
まずドラフトでは、「この分野なら一流」という一芸に秀でた選手や、スケールの大きな選手を数多く獲得している。甲斐などは”一芸選手”の好例で、入団当時を知る関係者は「肩だけはすごかったけど、バッティングは全然ダメでした。フリーバッティングでも打球が前に飛ばなかった」と証言する。
https://wpb.shueisha.co.jp/news/sports/2019/11/20/110167/
肩だけだった甲斐選手や脚だけだった周東選手など、飛び抜けている部分に注目した動きが12球団の中でも特に目立ちます。一芸しかない状態からのスタートなので、弱点の少ないオールラウンダーと比べると劣っているように見えがちですが、裏返すと「目立ったものもあまりない」ものより「1つだけ突き抜けたものがある」ものの方が最終的には強くなることも少なくないのではと思います。
もちろん、柳田選手や中村晃選手のように高いレベルで安定しているものが理想ではありますが、よほど体力・技術力・製品力があるところでないとそこに辿り着くのは難しいのではないでしょうか。
3:質問は5つまで
これはおそらく筆者の経験則の様子ですが、質問が6つ以上になると回答率が下がりやすい傾向があるみたいです。質問の数が絞られるので、購入プロセスに沿った内容・順番にすることが推奨されていました。
また、選択肢にすると、こちらが想定した回答の枠にはまってしまうので、設問数を減らす分記述式にしてリアルな回答(顧客の言葉で書かれた回答)をもらえるようにするとも書かれていました。
4:掲載確認は2択
「名前を出してもよい」or「イニシャルのみ可」の2択であることが推奨されています。
このあたりは「強みを知る・伸ばしたい」「ファン(エンゲージメントの高い顧客)の声を聞きたい・知りたい」という目的のアンケートであるという前提から、「公開できない回答を書く顧客は、今回の対象ではない」という割り切りがあるのではと感じました。
ファン層・エンゲージメントの高い顧客をターゲットにしたアンケートで、それ以外の顧客は「そもそも回答してくれない」という前提にたっているように感じる内容がちらほらあります。
そのため、この本で紹介されているアンケートを実施する場合、「顧客の回答率」をKPIに設定してしまうとかなり低い結果になりそうです。
5:アンケートはA4以内に
タイトルにもあるA4ですが、こちらも経験則ベースの提案と思われます。
Webアンケートなどだと4〜5ページにわたるものやスクロールが長いものなどもありがちですが、こちらも離脱率が上がったり集中力が切れた状態での回答が混ざる可能性を考えると「短く・濃い」アンケートを作るように意識する方が良さそうです。
アンケートのタイミングは成約直後
書籍では、購入・契約直後が理想で、購入を決定した人に書いてもらうことを推奨しています。
また、ファン層の回答を期待するとこからか、回答に報酬をつけることはNGとしていました。クーポン目的の回答が参考にできるかそう思わないか、おそらくその辺りは企業判断になるとは思います。
購入後の感想については成約直後では聞けない場合もありますので、その場合はフォローアップメールなどでそこだけヒアリングするという方法も手です。
Webアプリなどですと、購入後のThanksページや完了メールにアンケートを仕込むのが理想的ということでしょうか。購入後の感想については、商品を発送する場合であれば商品に返送用の封筒または葉書を同梱するというの手かもしれません。
質問項目は5つ
表現はサービス・製品によって変える必要がありますが、購入フローにあわせて設問を設ける必要があります。
1:どんな悩みや欲求を持って、あなたの商品やサービスを買おうとしているか?
理想の顧客像を掴む質問です。商品・サービスに対してどのような需要があるかを分析するためにも使える設問だと紹介されていました。
ファンの回答なので、同じような悩みを持つ人はファンになりやすいかもしれません。
2:成約率の高い媒体は何?
お金をかけるべき媒体の調査に使います。
ここで回答される数が多い媒体はCV(成約)しやすいと考えられますので、広告予算などの配分を調整することができます。
3:購入前に不安に感じていることは何か?
見込み客に伝えるべき内容を知るための質問です。
不安に感じる事柄を書いてもらうので、それに対する解決策を提示したり、不安を解消するオプションサービスを企画したりすることに使いましょう。
Catlogを購入した時のことを想像すると、「首輪を嫌がるかもしれない。サイズが合うか不安」という不安に対して「1週間試せるデビュープランがある」という提案が行われていました。
4:類似品とくらべてどこが良いと判断してもらったのか?
自社の強みを知る質問です。
ここの回答でよく見かける表現3つがその商品・サービスの強みであると考えられます。
また、顧客の声で「他社より自社を選んだ理由」を知る貴重なチャンスでもあります。長所は伸ばしていきましょう。
5:その商品を買うことでどんないいことがあるか?
利用後にどんなメリットがあるかを知る質問です。検討中の顧客がかなり関心を持つコンテンツですので、商品ページや広告などに積極的に活かしていきましょう。
できるだけ具体的な内容が書かれているものをピックアップすると良いとも書かれています。
アンケート結果から広告を作る
アンケート結果がそのまま顧客の知りたいことを説明する要素に使えるようになっています。
ですので、アンケートの集計・分析結果をもとに8つのパーツを用意して、それをデザインしていくと良いとされています。
1:ターゲットコピー
質問1で回答の多かった属性に向けたメッセージとして考えましょう。
「猫の体調をしっかり管理したいご家庭へ〜」とかがCatlogだと考えられるかなと思います。
2:キャッチコピー
キャッチコピーでは、具体的にどういう生活ができるようになるか、どういうメリットがあるかを端的に紹介できるのが理想です。この辺りは質問5の回答で挙がった声・感想をもとに考えると良いでしょう。
3:裏付けとなる証拠
キャッチコピーで提示したものを実現した例として、質問5の回答を紹介しましょう。
いわゆる「お客様の声」枠ですね。
4:ボディコピー
ここでは「選ばれる3つの理由」などを紹介します。質問4の回答が「他社ではなく自社を選んだ理由」ですので、そこからよく上がるものをピックアップしてやるとよいとされています。
5:オファー
具体的な商品・サービスの説明をここに書きます。
6:不安対策
「よくある質問」枠です。不安に感じたことを回答してもらったアンケート結果がありますので、それを活かしていきましょう。
7:行動喚起(CTA)
購入するためにまずやることは何かを伝えるコンテンツです。
8:問い合わせ先情報
最後に問い合わせできるアドレスや番号ものせてやりましょう。
読んでみて
トピックを自分の中で落とし込むためにまとめていきましたが、書籍の中ではそれぞれの項目について実際の案件をもとにしたストーリーなども紹介されています。
具体的にどのようなアンケートをして、その結果から作られた広告がどういう内容かといったリアルなものも少なからず掲載されていますので、書籍を読んでから、このブログ記事でおさらいするような読み方がより理解しやすいかなと思います。
Amazon式の社内プレスリリースは相性が良いかもしれない
この本を読んでいて頭に浮かんだのはAmazonで行われている社内プレスリリースです。
今回の本では広告文へのアウトプットがメインのゴールでした。が、Amazonの社内プレスリリースフォーマットを用いればアンケート結果を踏まえた新しいサービスの提案や、プレスリリースの作成などにも応用ができそうです。
以下が元記事で紹介されているフォーマットです。
・インターナル・プレス・リリース(社内用)のフォーマット
1) Heading(大見出し):ターゲット顧客が理解できる言葉でプロダクトを命名する。
2) Subheading(サブ見出し) :誰がどんなベネフィットを得られるかを1行で記述する。
3) Summary(サマリ):プロダクトとベネフィットを簡潔に記述する。
4) Problem(課題):プロダクトが解決する問題を記述する。
5) Solution(ソリューション):プロダクトがどうやって鮮やかに課題を解決するかを記述する。
6) Quote from You(提供側の声):プロダクトを提供している側からの声を記述する。
7) How to Get Started(始め方):使い始めるのが簡単であることを記述する。
8) Quote from Customer(顧客の声):顧客(仮)がどうベネフィットがあったかを記述する。
9) Closing and Call to Action(クロージングと行動の呼びかけ):まとめと、読み手に次にすべきステップを記述する。
https://note.com/miz_kushida/n/n418d598b40b4
この内容、A4アンケートの結果を用いることで書きやすくなりそうです。
またあるいは、新しい企画を考えるときに、「Amazon式プレスリリースを作る」 -> 「A4アンケートを実施する」 -> 「プレスリリースで想定した通りの体験をユーザーがしているかを検証する」という仮説・検証サイクルも作れるのではないでしょうか。
いろいろと発展・応用が利きそうなアイディアだなと感じましたので、積極的に取り入れていきたいなと思います。